ロープアクセス工法とは?利用するメリットについて解説
一般的にはあまり聞く言葉ではないかもしれませんが、高い場所でのメンテナンス作業を行う際の方法として「ロープアクセス工法」というものがあります。
ここでは、足場を組んで作業をする方法とはまったく違った方法であるロープアクセス工法の特徴、メリット、デメリットなどについて紹介していきたいと思います。
ロープアクセス工法とはどういったものか
その名前の通り「ロープ」を使って作業をするロープアクセス工法ですが、まだまだ日本では深くは知られていません。
そこでまずロープアクセス工法の概要について紹介していきます。
ロープアクセス工法の概要について
ロープアクセス工法とはその名前の通りにロープを使うことで高所、複雑な形状の場所、特殊な場所で作業を行う工法です。
もともとはヨーロッパの洞窟を探検するために考えられた技術が元となっており、それが「建設」「レスキュー」など他の場所でも使用されるようになっていきました。
高所などでもロープや専用の機材などを使って安全、迅速に作業をすることができます。
使用するのは「メインロープ」と「バックアップロープ」と呼ばれる2つのアンカーです。
アンカーとはロープの支点となる部分で、建物などに固定して安全を確保します。
ロープとアンカーを2つずつ使うことで、もし片方が外れてしまったとしても落下しないようになっています。
ただ、ロープアクセス工法は高度な技術が求められるために専門の訓練を行うことや、ISO22846」に準じたヨーロッパの産業用の資格取得が推奨されています。
ロープアクセス工法がなぜ注目されているのか
ロープアクセス工法が注目されているのにはいくつかの理由があります。
一般的に高所の作業をする場合には足場を組んで作業を行うのですが、足場を組み立てるのにも解体にも時間がかかりますし、足場の部品も大量に必要になります。
しかしロープアクセス工法ではそうした時間と労力を削減することができます。
また、足場を組むことができないような狭い場所やトラックが入っていけないような場所でもロープアクセス工法なら作業をするこおができます。
このように時間の短縮、費用の削減、狭い場所でも作業ができる操作性の高さが評価されているのです。
ブランコ工法やゴンドラ工法との違いについて
同じように足場を組まないで作業を行う方法に「ブランコ工法」と「ゴンドラ工法」があります。
ブランコ工法は名前の通りにブランコのようなものを使って作業を行うのですが、この際に利用するロープは専用のロープではないものが使われることも多く、安全性が低いという特徴があります。
ゴンドラ工法は建物の屋上から可動式のゴンドラを吊り下げる方法です。
安全性も高く、作業効率も高い方法ですがゴンドラを保有している業者が少なく高額になりがちです。
また、巨大なゴンドラを建物の上まで運ぶのにも大きな労力がかかります。
これらの工法はこういった点でロープアクセス工法と違っています。
ロープアクセス工法に向いている現場とは
ではどういった場所での作業に向いているのでしょうか。
ここではロープアクセス工法に向いている現場を紹介していきます。
足場を組むのが難しい場所
ロープアクセス工法は足場を組むのが難しい場所での作業に適しています。
高所、複雑な形状の場所などでの点検、調査、診断、補修などの作業が可能となります。
建物はトラブルが起きていないかどうかの点検を定期的に行う必要があります。
橋梁は5年に1度の定期点検が義務付けられ「近接目視」による点検をしなければいけません。
こうした場所でも点検車、高所作業車が入っていけない場合がありますし、足場を組み立てることができない場所もあります。
これらの調査の際にもロープアクセス工法は活躍するのです。
緊急で対応しなければならない場所
一般的な足場を組み立てるためには2~3人の作業員が数日かけて組み立てることとなります。さらに足場の高さが10m以上で組立から解体までが60日以上の場合には、設置工事開始の30日前までに所轄の労働基準監督署長に届け出が義務付けられているということがあります。
しかしロープアクセス工法であれば、比較的すぐに高所での作業を行うことができます。
そのためロープアクセス工法は緊急で対応しなければならない場所に適していると言えます。
ロープアクセス工法のメリットとは
ロープアクセス工法はメリットの多い工法です。
ここではそれらのメリットを順に紹介していきます。
足場が不要である
ロープアクセス工法の最大のメリットは足場が不要だということです。
ビルやマンションの中でも商業施設などは周囲に大きな足場を組んでしまうと営業に支障がでるため避けられることがあります。
また、住宅用のマンションでは足場があることによって盗難、盗撮、不法侵入などが起こりやすくなるという欠点もあります。
こういった際に足場が不要なロープアクセス工法は非常に便利なのです。
足場を組み立てるためには時間と労力がかかるだけでなく周囲の許可をとる必要もあります。
ここで多くの時間がかかる場合もあるため、足場を組まなくても作業ができるというのは大きなメリットとなるのです。
扱いやすい、操作性や柔軟性が高い
足場を組み立てるためにはパイプや底板部分のための幅として60cm以上の幅が必要となります。
しかし隣の家との間隔が狭い場合などではこれだけの幅を確保できない場合もあります。
ロープアクセス工法であれば40cmほどの幅があれば利用することができるため、操作性にすぐれていると言えます。
また、足場を組むのが困難な水辺などでも力を発揮します。
川の中に建設されている橋梁などの目視点検を行う場合にもロープアクセス工法は利用しやすいものとなっています。
費用を削減できる
足場は高く組む、長く組むというほど時間と費用がかかることとなります。
大規模な建設物に足場を組んでいく際には高額な費用がかかってきます。
また、橋梁点検車や高所作業車を利用する際にも車の費用がかかります。
しかしロープアクセス工法では足場、橋梁点検車、高所作業車などを準備する必要がないために費用を大きく削減することができます。
ロープアクセス工法のデメリットとは
多くのメリットがあるロープアクセス工法ですが、実際に利用する際にはデメリットもあります。
ここではそれらのデメリットについて紹介していきます。
すべての業者が扱っているわけではない
ロープアクセス工法は高い技術、知識が必要となるだけでなく、安全性の高い道具を使うことが前提となります。
こういった理由のために厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署は平成28年7月1日から、ロープ高所作業従事者に対して特別教育を求めています。
これは具体的には学科4時間・実務3時間の特別教育の実施などが該当します。
また、使用するロープについても安全性についての規定がありますので、どんなロープでも良いというわけではありません。
こうした制限があるために、すべての業者がロープアクセス工法を利用しているわけではなく、扱っていない業者も多くあります。
天候に左右されやすい
ロープアクセス工法は天候の影響を受けやすい方法です。
大雨であれば雨水で足が滑ってしまって安定させることができませんし、強風では大きく体があおられることとなって危険です。
もともと高所での作業は天候の影響を受けやすいのですが、ロープアクセス工法は特に影響を受けやすいと言えるでしょう。
ロープアクセス工法を扱っている業者を選ぶポイントとは
ロープアクセス工法はすべての業者が扱っているわけではないこともあって、業者を選ぶ際には慎重に選ぶ必要があります。
ここではロープアクセス工法を扱っている業者の中でも良い業者を選ぶポイントを紹介していきます。
適正な価格か、見積もりは細かく書かれているか
足場については扱っている業者も多く、だいたいの相場がわかりやすいということもあるのですが、ロープアクセス工法は扱っている業者が少ないためその価格が適正な価格なのかどうかがわかりにくいということもあります。
そのため、できれば複数の業者に見積もりを出してもらい、比較しながら選びたいところです。
その際、他の業者と比べて高すぎるのは悪質ですし、低すぎるのも何か理由がある可能性があります。
工事内容と費用を見比べて適正な価格かどうかを確認しておきましょう。
また、見積書の項目が細かく書かれているかどうかも重要です。
相場がわかりにくいロープアクセス工法だからこそ、項目ごとに細かく書かれていなければわからないのです。
「一式」という言葉でまとめられている場合は要注意だと言えます。
項目ごとに細かく記載してもらうよう依頼し、それが断られるような業者であればかかわらないようにしましょう。
実績が豊富か
ロープアクセス工法はそれほど歴史がある工法ではないだけに、実績があるということが重要となります。
業者の公式ホームページなどに工事実績が記載されていることが多くありますので、それらを確認してどのような実績があるかを見ておきましょう。
実績が豊富な業者であれば想定外のことがおきても適切に対応してくれます。
まとめ
ロープアクセス工法は足場の設置が不要であり、費用も抑えて短期間で工事を行うことができる工法です。
特に組み立てや解体の時間が必要ないというのは大きなメリットとなります。
一見、ロープに吊られて作業をしている姿は不安定に見えるかもしれませんが、安全性が保証されたロープを使い、2つのアンカーで固定して作業を行うため安全性が認められている工法でもあります。
足場が組みにくい、特殊な形状をしているような場所であっても利用することができますので、点検、調査、補修などの際には利用してみるのも良いでしょう。